誰が誰を監視するのか――探偵が思う「安心」と「不安」のバランス

1. 世田谷事件が示した“監視国家の現実”

2025年9月1日、東京・世田谷区で起きた女性刺殺事件。
犯人は翌日、成田空港で逮捕されました。

あまりの早さに「どうやって?」と驚いた探偵さんもいるでしょう。

背後で動いていたのは、警察庁のSSB(監視支援分析センター)
全国の防犯カメラをAIで解析し、服装や歩行パターンから人物を特定する――。
まるで映画のような話ですが、これはもう現実の日本です。

探偵として調査の現場に立つと、このスピード感には正直、舌を巻きます。
私たちは対象者を尾行・張り込みで追い、映像を一枚ずつ残します。
一方で国家は、AIの力で数分のうちに全ての移動を監視できる。
もはや“人の目”を超えた監視社会が始まっているのです。


2. AI監視がもたらす「安心」と「息苦しさ」

SSBのAIシステムは、犯罪抑止に大きな力を発揮しています。
通り魔やテロの未然防止、逃走犯の迅速な逮捕、行方不明者の早期発見――。
命を救う技術であることは間違いありません。

けれど、監視が広がるほど“見られている社会”になります。
人は「誰かに見られている」と思うだけで行動を変えるものです。
浮気調査でも、対象者が“監視されているかも”と感じた瞬間、
動きが不自然になり、自由さを失う。
AI監視も同じ。安全と引き換えに、人々の自然な行動が制限される。
これが、便利さの裏にある息苦しさです。


3. 高市新総裁の警鐘――「見えない監視」が始まっている

カメラの目よりも厄介なのが、サイバー空間での監視です。

高市新総裁(2025/10/19時点)は、過去のYouTube動画でこう指摘しています。

「中国製の監視カメラやウェブソフトが、サイバー攻撃の起点になる可能性がある」

実際、安価な中国製機器が日本市場を席巻しています。
Wi-Fiルーターの「TP-Link」、中古PCに多い「キングソフト」。
どちらも中国企業で、日本法人はあっても通信の安全性は保証されていません。

各社日本法人はありますが、キングソフトについては、本体の中国本社の代表者は「共産党員」であると公表されています。

映像を守るはずの監視カメラが、逆に“情報漏えいの入り口”になる――。
探偵として機材を扱う者からすれば、これは現実味のある話です。
「安いから」という理由で選ばれた製品が、
国家レベルの情報を抜く“目”になる可能性もあるのです。

4. 世界が見せる「監視の分かれ道」

監視社会への考え方は、国によってまったく違います。
大きく分けると――アメリカは「監視を嫌う国」、中国は「監視を受け入れる国」、そして日本は「静かに進む国」です。

アメリカ:自由を守るための不信感

アメリカは、建国以来「権力を信用しない」という思想が根っこにあります。
ジョージ・オーウェルの小説『1984年』に出てくる“ビッグ・ブラザー(監視国家)”は、アメリカ人にとって悪の象徴。
政府が国民を監視することは、自由を奪う行為と考えられています。

2001年の9.11テロのあと、ブッシュ政権が通信傍受法を通したときも、
「自由を失ってまで安全はいらない」と全米で反対運動が起きました。
もしアメリカでSSBのような全国監視センターを作れば、世論が黙っていないでしょう。

中国:秩序を保つための監視

中国は真逆の発想です。
国家が国民を監視するのは「秩序を守るため」であり、悪いことではないという考え方。
各地方都市では「社会信用システム」という仕組みが導入され、
市民一人ひとりの行動をスコア化しています。

借金の返済や交通マナー、SNSの投稿内容まで点数化され、
スコアが低い人は飛行機や新幹線のチケットも買えません。
それでも多くの中国人がこの制度を支持しています。
「多少監視されても、街が安全で便利になるなら構わない」――
そう考える人が約8割を占めているそうです。

日本:静かに進む“半透明の監視社会”

日本はその中間に位置します。
「監視は嫌だ」と声を上げる人は少ないけれど、
「安全のためなら仕方ない」と受け入れてしまう傾向が強い。

気づけば、防犯カメラは街の至る所にあり、
SSBのようなAI解析も進み、監視が当たり前になっている。
誰も大声で反対しないまま、
社会全体が“静かに監視される側”に移り変わっているのが、今の日本なのです。


5. 探偵から見た「情報の穴」

監視が進む一方で、私たちは“誰に見られているか”を意識していません。
今や国家だけでなく、企業、海外メーカー、SNS運営者など、
無数の組織が人々の行動データを収集しています。

探偵の世界では、情報管理は命綱です。
報告書の流出ひとつで、依頼者の人生が壊れることもある。
だからVPNや暗号化通信を徹底します。
それでも、一般家庭では中国製ルーターや安価なカメラが使われ、
無自覚のうちに映像や音声が外へ送られていることも。

つまり、私たちはもう「見られる社会」に住んでいる。
しかもその監視者は、必ずしも日本国内とは限らない。


6. “監視する側”を誰が見張るのか

探偵業でも、情報の扱いには厳しいルールがあります。
だからこそ、国家レベルの監視にも同じ倫理が必要だと思います。

SSBがどんな基準でAI解析をしているのか、
どこまで市民データを使っているのか、
その透明性はまだ十分とは言えません。
「安全のため」という名目で、自由を侵食していないか――。
監視する側を監視する「もう一つの目」が、今こそ必要なのかも知れません。


7. 結論――便利さの裏にある“静かな支配”

AI監視は確かに社会を安全にする。
でも同時に、私たちの行動や会話、映像までもがどこかに保存され、
知らぬ間に分析されている。

高市新総裁の警告は、まさにその「裏の監視」を指しているのだと思います。
“便利で安い”という理由で選んだ機材やソフトの中に、
他国の意図が入り込んでいるかもしれない。

探偵として感じるのは、
「真実を暴く力」と「人を縛る力」は紙一重だということ。
AIも監視も、使い方次第でどちらにも転びます。

安心を求めるあまり、自由を差し出す社会にならなければいいなと願っています。

株式会社帝国法務調査室
代表者 山口 健
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